「AI対策なら、まずWikipediaを整えよう」
広報の媒体リストを作り直すとき、この一言でだいたい話がまとまりませんかね。
へクス子も、英語圏の調査に出ていた「AIが引用するサイトTOP10」を印刷して、そのまま社内の資料へ貼ったことがあります。上から3行が全部Wikipedia系でしたので、迷う余地が無いように見えたんですよ。
ところが、13言語ぶんの引用を数え直した集計を開くと、その順位表が自分の市場でも成り立つとは限らない、という話になりましてね。
英語圏の順位表を日本語の媒体リストへそのまま貼るのは、他所の町の路線図で乗り換えを調べるようなものであります。
Dmitrij Żatuchinが2026年6月に出したプレプリントは、12市場13言語・128ブランドについて、167,551件の引用を数えております(R)。
AIがブランドの話を書くとき、どこから引いてくるのか
Wikipediaが最多の引用元だったのは、12言語のうち11言語です。ここは英語圏の順位表と同じですね。
ただし、リトアニア語だけは違いました。最多はビジネス誌の vz.lt です。順位表が当たるのは、そこまででした。
グラウンディングってのは、AIが回答を書く前に、根拠として実際に読みに行ったページのこと。回答の文章そのものではなく、その手前で何を開いたかを数えております。
ポーランドでは、求人ページが上位に来ていた
もっと大きく入れ替わったのがポーランドの国内ブランド46社で、最多の引用元は YouTube でした。動画です。
そして求人・採用系のポータル4つを合わせると、ポーランド語版Wikipediaの2倍の引用が出ております。採用ページが、ブランドの可視性を作る材料として数えられていたわけですね。
自社の採用サイトを媒体リストに載せている会社って、どれくらいあるんでしょうか。へクス子の手元の表には、入っておりませんでした。
なぜ入れ替わるのかは、この論文が測っておりません。その言語圏で厚みのある媒体が違うから、というのは推定にとどまります。
この数字を、どこまで自分の市場へ持ち込めるか
対象は中東欧・北欧・バルトの12市場で、日本と日本語は入っておりません。日本語で同じ顔ぶれになる保証は、どこにも無いんですよ。
査読前のプレプリントでもあります。著者の所属の一方 Rankfor.AI は、AI可視性のランキング計測を売っている事業者でしてね。
測定日は論文に書かれておらず、著者自身が「特定のモデル版と収集期間に依存する」と限界に挙げております。AIはPerplexity・Gemini・GPTの3つで、Claudeは入っていません。3つのデータセットを統合したことによる粒度の差も、著者が限界に数えております。
引用の85.7%が第三者ドメインだった、という数字も出ております。こちらは別の測定でも同じ向きが出ていた話でして、この記事の主筋ではありません。
媒体リストに「その言語で引かれているか」の列を足す
英語圏の順位表を貼り替えても、自分の市場の顔ぶれは出てきません。足すのは列のほうです。表そのものは捨てません。
いま持っている媒体リストの右側に、「その言語のAIの回答で実際に引かれているか」を書く欄を1本作る。埋まらない行は、何本出るでしょうか。そこが、まだ測っていない場所であります。
日本語の答えは、この論文には載っておりません。日本語のAI引用元はTOP10のうち4枠が2か月で入れ替わった、という測定をこちらに書いております。
顔ぶれが動く前提で、自分の言語の表をもう1枚作る。そこから先は、自分で測るしかない領域ですな。
出典
- Żatuchin, D. (Estonian Entrepreneurship University of Applied Sciences / Rankfor.AI), “How Large Language Models Source Brand Reputation Across Languages and Markets”, arXiv:2606.25787, 2026-06-24, https://arxiv.org/abs/2606.25787