「ページは直したんです。それでも出てこないんです」
自社サイトの説明文を書き直し、製品ページの見出しも整え、よくある質問まで足した。それでもAIに聞くと自社の名前が出てこない。
そういう相談を受けたとき、へクス子は次に何を足せばいいのか答えられませんでした。
直せそうな箇所はもう一周見直し済みで、それでも手が止まっている頃かもしれません。
見当たらないのは、たぶん探している場所が違うからです。
じゃあ、AIはどこを見て自社を選び落としているのか。
AIは回答を書く前に、自分で検索をしております。その検索に自社名が使われているかどうかを、13,281件ぶん数えた実測がありました。
AIは回答を作る前に、どのブランドを検索しているのか
自分が覚えているブランドのほうです。
モデルが記憶しているブランドは55.7%の割合で検索され、記憶していないブランドは17.4%でした。比にすると3.2倍だそうな(geoSurgeが2026年6月上旬に公表した実測。R)。なかなかの開きでしょう。
測り方は、2026年5月29日から6月9日まで、9業種66問の質問を各60回投げるというもの。質問文にはブランド名を入れていません。自然に出てきた名前だけを数えた形ですよ。
そこから約3,960件の回答と13,281件の内部検索、1,416件のブランド単位の観測を取ったんですよ。記憶の側はgeoSurge独自の手法で、検索の側はGemini 3.5 Flashで観測しておりました。
回答の前に走る「fan-out検索」の中身
fan-out検索ってのは、AIが回答を作る前に内部で自分に投げる検索クエリのことです。読者の目には触れない検索でしてね。
読者が「業務用チャットツールのおすすめは」と聞いたとき、AIはその文字列をそのまま検索するわけではありません。「業務用チャットツール 比較」「A社 料金」「B社 導入事例」のように、質問を複数の検索へ分解します。
このとき「A社」「B社」の位置に自社名が入るかどうかが、55.7%と17.4%の差です。
実務の言葉に直すと、回答文に載るかどうかを見る前に、検索の材料として名前を使ってもらえるかという段があるわけですね。
検索は、上位の数社に寄っている
ブランド名を指定した検索のうち、63%が記憶上位5ブランドのいずれかへ向いていました。残りが、それ以外の全ブランドの取り分になります。
先ほどの55.7%と17.4%は「観測されたブランドのうち何割が検索されたか」で、この63%は「検索の行き先がどう配分されたか」です。分母が違うので足したり並べたりはできませんが、向きはどちらも同じでしてね。
覚えられている数社に検索が集まり、それ以外は材料として呼ばれにくい。回答文を見る前の段で、すでに差がついているということですね。
ただし17.4%はゼロではありません。覚えられていない側でも、6回に1回は検索の材料として名前が使われております。
17.4%のほうは、打ち手で動かせる側の数字なんですよ。じゃあ、その17.4%はどこを触れば上がるのか。
直す順番を、自社ページの外へ一段ずらす
モデルの記憶は、自社サイトの文言を直しても直接は動きません。学習と参照の材料になるのは、自社の外に積まれた言及のほうです。手を入れる面がまるごと違うんですよ。
具体的には、比較記事、専門メディアの取材、レビューサイトの掲載、業界レポートへの登場。自社名が第三者の文章の中に何度出てくるか、という面ですね。
自社ページが無駄になるわけではありません。順番が後ろなだけです。
検索の材料として名前が呼ばれて、その検索の着地先として自社ページが読まれる。だから自社ページは、検索された後に効くわけっすね。
予算の置き場所でいうと、AI可視性の枠を広告の列だけに置いていた場合は、広報や第三者言及の列にも枠を作ることになるでしょう。へクス子はこの順番を知るまで、広告の列だけを眺めて予算表を書いておりました。
この数字を社内で使うときの但し書き
添えておくべき留保が6つあります。多いですが、全部残します。
- 発行者自身が「探索的データにおける関連であって因果ではない」と明示している
- 有名ブランドは記憶されやすく検索もされやすいため、関連の一部は知名度そのものを反映している可能性がある(これも発行者の明示)
- 業種別の数値は「示唆的であって確定ではない」(同じく発行者の明示)
- 検索側の観測はGemini 3.5 Flashの1モデルで、他のAIのfan-out挙動は測られていない
- geoSurgeはAI可視性の計測ツールを売る事業者であり、結論に商業的利害がある
- 米国の買い手向け質問であり、日本語での挙動は測られていない
1つ目の留保は、社内で説明するときの言い方にそのまま効いてきますね。「記憶させれば検索される」という因果の話には、まだ届いておりませんからね。
海外向けの体重計で自宅の床の傾きを測るようなもので、目盛りの向きは分かっても、自宅の数値そのものは出てこないわけです。日本語での水準は、自分で測るほかないんですよね。
落ちている段を特定してから予算を動かす
AI可視性は、3段で並べ直せます。覚えられる、検索される、回答に出る。この3段です。
自社は何段目で落ちているのか。これは段ごとに見るものが違います。
回答文に自社名が出るかを数えれば3段目が、AIに自社カテゴリの質問を投げて内部検索の内容を見れば2段目が分かります。
1段目は、モデルに自社名だけを聞いて何が返ってくるかで当たりを付けられるでしょうな。
1段目で落ちているなら、自社ページの改修を続けても届きません。先に手を動かす面は、第三者に名前が出るほうです。
測るときは1つのAIで済ませないほうが無難であります。今回の実測もGemini 3.5 Flash1モデルの観測であって、他のAIが同じ順番で検索している保証はありませんからね。
そのうえで来期の計画に戻ると、「AI対策の予算はどこに置くか」という問いに、段の名前で答えられるようになるはずです。うちは1段目で落ちているので広報の枠を厚くします、という説明ができるわけですね。
いやはや、回答文の手前にもう一段あるとは思っておりませんでした。
出典
- geoSurge, “AI Searches What It Remembers (model memory predicts which brands get searched)”, 2026-06, https://geosurge.ai/posts/model-memory-predicts-which-brands-get-searched
- Search Engine Land, “AI models favor familiar brands in search: Study”, 2026, https://searchengineland.com/ai-models-favor-familiar-brands-search-study-484054