「AIに出たいなら、AI向けの枠を買えばいいんじゃないの」
言われたへクス子のほうは、その場で数字を出せませんでした。
質問としては、まっとうなんですよ。検索に出たいならリスティングを買ってきたわけですから、AIでも同じ発想になります。
なんですが、AIの回答に出稿枠を買った覚えは誰にもありません。では、あの回答に並んでいるリンクは、いったいどこから来ているのか。
そこを2,500万件超のリンクで数えた調査が、2026年5月に出ておりました。
AIの回答に出てくるリンクは、どこから来ているのか
大半が、自社以外の誰かが書いた記事です。
ChatGPT・Claude・Geminiの回答から集めた2,500万件超のリンクのうち、84%がアーンドメディア(報道・学術・政府・百科事典・第三者の企業記事)でした(Muck Rack、2026年5月7日公表R)。
報道だけで27%を占めております。いっぽう、有料の広告・記事広告のほうは0.3%であります。
アーンドメディアってのは、要は「お金を払って載せた枠ではなく、誰かが自分の判断で書いた記事」のことですね。
数えたのはMuck Rack。PR・広報の実務者向けにメディアデータベースと効果測定ツールを売っている会社で、17分野を横断して集計しております。
単発の外れ値ではないのか
同じ調査は2025年7月から3版出ていまして、アーンドメディアは82〜89%、報道単独は25〜27%の帯に収まっています。
1回の測定でたまたま出た数字ではない、ということですね。
ここが実務では効いてきます。1版だけの数字なら「その月のニュースが多かっただけでは」と社内で押し返されますが、3版そろって同じ帯に出るなら、予算の置き場所を動かす根拠として持ち出せますからね。
モデルによって、引用の出し方はまるで違う
引用の付き方は、AIごとにかなりバラつきます。
- ChatGPTは96%の回答に引用を付け、1回答あたり平均5件
- Geminiは82%の回答に付けて、平均8件
- Claudeは55%の回答に付けて、平均13件
同じ質問を投げても、片方は引用が5件ずらりと並び、もう片方はそもそも引用が付かない。
つまり、1つのAIだけを開いて「うちの名前が引かれていない」と結論を出すと、測っているのは自社の可視性ではなく、そのモデルの引用の出し方のほうになります。
味見を1皿しかしていないのに、コース全体の味を語るようなものでありますね。
だから数えるときは複数のモデルを横に並べて、モデルごとの本数の差を先に把握しておきます。
で、予算はどの列に置き直すのか
ここまでの数字を素直に読むと、AI可視性の仕事は広報の側へ寄ってきます。
引かれているのは報道・専門メディア・第三者の比較記事のほうですから、効かせる先は広報と第三者言及の面ということですね。
具体的には、記者や専門メディアの書き手が使える形で自社の一次情報を出すところから始まります。数値の入ったプレスリリース、方法まで書いた調査結果、事例の実名と数字。
自社サイトに置いたきりの資料は、誰にも引かれません。AIから見れば、存在していないのと同じなんですよ。
この84%を、社内の目標へどう置き換えるか
そのまま書き写すことはできません。留保が5つあるからです。
- Muck Rack はPR・広報向けのツールを売る事業者で、「アーンドメディアがAI引用の主戦場」という結論に商業的な利害があります
- 発行者が限界を明示していません。プロンプトの集合・抽出条件・各版の測定期間の詳細は公表されていないんですよ
- 対象は英語圏の回答です。日本語での引用構成は測られていません
- 「アーンドメディア」の定義が広く、報道・学術・政府・百科事典・第三者の企業記事を含みます。84%をそのまま「広報活動で取れる枠」と読むことはできません
- 引用の件数の話であり、その引用がブランドの選ばれやすさにどれだけ効いたか(効果量)は測られていません
とくに4つ目は、社内で目標を置くときに効きます。84%のうち百科事典や政府サイトが何割かは分かっていないので、広報チームの目標値に84%をそのまま書き写すと、届かない数字を追うことになります。
それでも、引かれていた面が有料の枠ではなかったことは動きません。アーンドメディアの定義が広かろうと、比率が数ポイント振れようと、広告・記事広告が0.3%だった側は変わらないからです。
留保を5つ抱えたままでも、予算をどちらの列に置くかまでは決められるわけですね。
AI可視性を、広告の列から広報の列へ移す
今日ずらせるのは、予算の置き場所1つでしょう。
AI向けの出稿枠を探す作業は、いったん止めて構いません。引用の0.3%しか無い面に、人と金を張ることになるからです。
代わりに寄せるのは、第三者に書かれる面のほうです。報道・専門メディア・比較記事の書き手が使える一次情報を出す。これはもともと広報が持っている仕事で、新しい部署も新しいツールも要りません。
そのうえで、自社の名前が実際に引かれたかどうかは、複数のAIをまたいで数えます。1つのモデルの結果だけでは、上で見たとおり判断できませんからね。
どの面が実際に引かれているかは、うちの公式サイトより、AIはRedditの口コミを参照してる問題のほうにも数字が置いてあります。
広告の列から広報の列へ、予算を1行ずらすところから始めていきましょう。