「動画もやったほうがいいですよね」と言いながら、その話が結局そのまま流れていく。同じような話が、去年の企画会議でも尻すぼみになっていました。
記事のほうはAI向けに構造を整えた。出典も数字も入れた。でも動画までは、さすがに手が回りません。
そもそも、うちのチャンネルは登録者が三桁で、再生数も伸びていないわけです。
へクス子の中でも、動画は再生数が伸びてナンボの世界ということになっておりました。伸びない動画は、誰も座らない席に置いてきたパンフレットのようなもので。
なんですが、AIが実際に引用した動画の中身を1億件規模で開けてみたら、その「埋もれているはずの動画」がごろごろ混ざっていたようでして。
引用された動画の4割は、再生1,000回未満だった。
AIに引用されるYouTube動画にはどんな特徴があるのか
AIに引用されたYouTube動画の 40.83% は、再生1,000回未満でした。再生数・高評価・チャンネル登録者数と引用頻度の相関はいずれも ±0.03 以内でほぼゼロだった一方、説明文の長さだけが 0.31 という弱いつながりを見せています。
つまりAIは、「人気の動画」ではなく「中身を読み取れる動画」を引用しているということですね。
見ていくのは、AI検索での見え方を監視するツールを手がける OtterlyAI が2026年3月2日に公開した実測であります(R)。
30日間に観測された1億件超のAI引用のうち、YouTube動画が引用されたものを取り出し、動画の側の特徴を数えたものだそうな。
対象のAIは ChatGPT、Google AI Overviews、Google AI Mode、Perplexity、Microsoft Copilot、Gemini の6種です。
引用と連動していたのは、説明文の厚さと公開の新しさ
で、結果がどうだったかと言いますと、人気を表す数字が軒並みゼロ付近に並びました。
- 動画の再生数: −0.03
- 高評価数: −0.02
- チャンネル登録者数: −0.03
- 動画の長さ、タイトルの長さ: どちらも 0.02
ここで並べているのはという数字です。
相関係数ってのは、要は「0に近ければ関係なし」と読む指標ですね。0.3前後で、ようやく弱いつながりがある、という程度になります。
ゼロ付近に沈まなかったのは、たった2つだけでした。説明文の長さが 0.31、公開の新しさが 0.3 っすね。
人気の指標が総崩れになって、機械が読める情報量と鮮度だけが残った。今回いちばん面白いのは、この並びですね。
引用されている動画は、どんな形をしているのか
引用の 94% は長尺動画で、YouTube Shorts は 5.7% にとどまりました。ただし引用された動画の 50% は8分未満なので、長ければいいという話でもありません。
説明文の平均は334語、タイトルの平均は19語だったそうな。
そしてもう一つ、へクス子が目を留めたのがタイムスタンプ(章立て)の数字です。
タイムスタンプってのは、説明欄に「00:00 はじめに」のように書くと、動画が章に分かれる機能のことですね。
引用された動画のうち、これを入れていたのは 31% だけでした。ところが、入れていた動画の 78% は複数回引用されています。
章単位での引用が起きているのは Google 系だけで、内訳は AI Overviews 73%、AI Mode 27%。ほかのAIでは1件も観測されていません。
章立ては、Webページでいう見出しに相当する構造だと考えると腑に落ちる話ですなぁ。見出しのない長文が読みにくいのは、人間もAIも同じというわけですね。
動画の打ち手は、どのAIに効くのか
YouTube動画の引用がどこで起きているかを見ると、効く相手はかなりはっきり分かれています。
- Perplexity: 38.7%
- Google AI Overviews: 36.6%
- Google AI Mode: 19.6%
- ChatGPT: 4.4%(Microsoft Copilot 0.5%、Gemini 0.2%)
Google 系と Perplexity で約95%を占めていて、ChatGPT はほとんど動画を引用していません。
ということは、動画への投資はChatGPT対策とは別枠で考えたほうがよさそうです。
ちなみに、AI引用全体でソーシャル・動画のプラットフォームが占めるのは 5.54%。その内訳は Reddit 46.4%、YouTube 31.8% で、YouTube はソーシャルで第2位の引用元でありました。
この数字を打ち手に使う前に、押さえておく留保
ここまでの数字には、押さえておくべき留保がいくつもあります。
まず、調査したOtterlyAI は AI検索での見え方を測るツールを売るベンダーで、「AIでの被引用を測るべき」という結論に商業的な利害を持っているわけです。
次に、これは相関であって因果ではありません。「説明文を長くしたら引用された」という介入実験は行われていないんですよ。
さらに、対象は「すでに引用された動画」だけで、引用されなかった動画との対照群がない。つまり引用されやすさの推定ではなく、引用された集団の内訳を見ているわけですね。
観測は30日間の1スナップショットで、季節変動やアルゴリズム更新の影響も分離されていません。言語別の内訳は非公開なので、日本語動画の実測ではないと考えるのが妥当でしょう。
へクス子も最初は「説明文を伸ばせば済む話か」と思ったんですが、そこまでは言えないんですよね。言えるのは「引用されている動画は説明文が厚く、章立てを持っている」までです。
そもそも、厚い説明文が引用を呼んだ、と読んでよいんですかね。引用された動画しか開けていない今回の調査では、もともとAIに拾われる側だった動画は、たまたま説明文もきちんと書かれていた、という読み方を消せないんですよ。
それでも、対照群つきの実験を待つ前に手を付けていいくらいには、この並びは安定しております。
撮り直しより先に、説明文と章立てを整える
今回のデータが示しているのは、動画のAI可視性は「読み取れる形に整えれば動く」ものだ、ということですね。再生数が三桁でも、引用される側に回れる余地は残っているわけです。
今日から触れるところは、2つですね。主要な動画の説明欄に、00:00 から始まる章を3つ以上、時刻の昇順で入れること。そして説明文に、要約と関連する固有名詞、関連リンクを書き足すことです。
どちらも撮り直しは要りません。すでに公開してある資産の、外側のラベルを貼り直す作業であります。
そのうえで、動画がAIの回答に出ているかどうかは、記事とは別に定点で見ておくのがよさそうです。効く相手が Google 系と Perplexity に偏っている以上、ChatGPTだけを眺めていると変化を取り逃がしますからね。
そんなわけで、次にチャンネルを開いたときは、再生数の隣にある説明欄のほうを見てみてくださいませ。