「今期もメディア掲載は増えてるんですよ」。PRの月次報告だと、その一行を誇らしく書けるのも当然で、実際に掲載件数は伸びているわけですから。
なんですが、その同じ月に ChatGPT へ「〇〇のおすすめツールは」と聞いてみると、自社の名前は出てこない。
掲載の数は伸びている。AIの回答には出ない。
この2つが同時に成り立つと、報告の数字が急に手応えを失うわけです。
へクス子は長らく、露出は積み上げれば効くものだ、という前提で数えておりました。貯金箱に小銭を入れるようなもんで、種類は問わないだろう、と。
ところが、6業種240ブランド・約41万件の言及を分けて数えた調査で、拾われる言及には形があると分かりました。
AIに拾われる言及は、ページのどこに置かれているのか
AI回答に繰り返し登場するブランドの言及は、約70〜80%がページの本文・表・リストの中にありました。フッターやサイドバー、定型のボイラープレート部分に置かれた言及は5%未満です。
ブランド言及ツールの BrandMentions が、6業種240ブランドにひもづく約41万件の公開言及を、置かれ方・出どころ・リンクの有無で仕分け直しております(R)。
公開は2026年7月下旬、対象の期間は2026年4月19日から7月17日までの90日間であります。
観測されたAI側は、Google の AI要約、Perplexity、ChatGPT のブラウジングモードの3つ。投げた質問は「おすすめ」「比較」「代替」といった商用検討クエリだそうな。
要は、買う前に候補を並べるときの聞き方ですね。設計はシンプルで、AI回答に繰り返し出るブランドと、ほとんど出ないブランドに分け、言及の分布を比べるというもの。
「ボイラープレート」ってのは、要は「どのページにも同じ形で入っている定型部分」のことです。会社概要のフッターや、サイドバーの導入企業ロゴ一覧がこれにあたりますね。
へクス子も、ロゴ枠を1つ確保するのに何往復もメールを重ねてきた口です。なかなか座り心地の悪い数字であります。
誰が書いた言及なのかで、分布ははっきり分かれていた
AIに繰り返し出るブランドは、公開言及の約70〜80%が第三者ソースでした。自社サイトや自社ブログではなく、他社が書いた記事のほうが多い。
一方、ほとんど出ないブランドは自社所有メディアが約30〜40%を占めていたそうな。第三者は約60〜70%にとどまります。
オウンドメディアを厚くする施策そのものが悪いわけではありません。ただ、それだけを積んだ状態は、低可視性群の分布のほうへ近づいていくということですね。
言及の「量」と被リンクの比較は、「リンク」より「うわさ」が多いブランドの話で扱いました。Ahrefs の集計では、AI可視性との相関はブランド言及 0.664 に対し被リンク 0.218 でしたね。
その言及は、どんな形をしているのか。今回のデータが足しているのは、そちらであります。
リンクが付いていない言及のほうが、数としては多かった
で、高可視性ブランドまわりの第三者言及を、リンクの有無で分けた内訳がこちらです。
- テキストのみ(リンクなし): 約50〜60%
- ハイパーリンク付き: 約25〜35%
- マーケットプレイスやプロフィールへのリンク: 約5〜10%
最大勢力は、リンクの付いていない、ただのテキスト言及でした。
リンクをもらえるかどうかを条件に掲載先を選んでいると、どうなるでしょうか。いちばん数の多い枠を、自分から外していることになるわけですね。
もちろん、リンクが無意味という話ではありません。ただ「リンクが取れなかったから成果ゼロ」という数え方は、AI可視性の観点では実態と合っていないでしょうな。
社名の隣に何が書かれているかで、拾われ方が変わる
置かれた場所の次は、周囲の言葉です。高可視性の言及のうち約35〜40%は、カテゴリ語から5〜10語以内の距離に出現していました。
カテゴリ語ってのは、「プロジェクト管理ツール」のような、何の会社かを一言で示す言葉のことですね。
さらに約20〜25%は「〜より」「代替」といった比較表現の近くに置かれています。逆に、説明的な文脈を伴わない、ただの社名の露出も約10〜15%ありました。
社名だけが載っている記事は、AI側から見ると「何の会社か」が結びつきません。人間なら前後の文脈で補えますが、抜き出す側は補ってくれないんですよ。
社名の書き方まで指定して渡すのは、こちらから動かせる数少ない一手であります。カテゴリ語と社名が同じ文の中に並んでいて、できれば比較の並びに置かれていること。
掲載交渉でお願いする内容が変わってくる、というのが今回いちばん実務に効くところっすね。
この数字は、水準ではなく分布の差として読む
発行元の立場・数値の粒度・観測の設計、この3つが読み方を狭めます。
- 発行元の BrandMentions はブランド言及のモニタリングツールを売るベンダーであり、「言及がAI可視性に効く」という結論に商業的な利害がある
- 数値がすべて「約70〜80%」のようなレンジ表記で、有意差検定も信頼区間も示されていない
- これは相関の観測であって、因果が証明されたわけではない
なので、70%や5%未満という水準そのものを、社内資料の目標値に固定しないほうが安全です。
読み方としては、高可視性群と低可視性群で言及の分布が違っていた、という相対の話に寄せておきましょう。
それでも、自社の言及はどちらの分布に似ているのか。差があるのなら、そこは今日から数えられますからね。
掲載一覧に「本文の中か」の列を1つ足す
拾われていた言及には、共通の置かれ方がありました。第三者が書いた記事の本文・表・リストの中に、カテゴリ語のそばで社名が置かれていること。
リンクの有無は、その次の条件ですね。ところが掲載本数の一覧は、本数しか見ていないので、この違いを教えてくれません。
列が1つ増えるだけで、掲載1本ごとに「AIが拾える置き方だったか」が手元に残ります。まず、直近3本の掲載を開いて、社名が本文・表・リストの中にあるか、フッターやロゴ一覧にあるかで仕分けること。
そのうえで、その仕分けの結果と、AI回答に自社が出てくる割合を並べて、月に1度でも同じ形で見ること。1回の観測では上下が読めないので、同じ質問を繰り返すのが肝であります。
掲載は数えていても、置き場所までは数えていなかった。いやはや、露出の話もまだ掘るところが残っておりますなぁ。
出典
- BrandMentions (Cornelia Cozmiuc), “Do Brand Mentions Really Influence AI Visibility? The 2026 Evidence, Explained”, 2026年7月, brandmentions.com(6業種240ブランドにひもづく約41万件の公開ブランド言及を対象に、2026年4月19日〜7月17日の90日間、Google AI Overviews・Perplexity・ChatGPT ブラウジングモードの商用検討クエリ回答を観測。AI回答に繰り返し登場するブランドは公開言及の約70〜80%が第三者ソース、ほとんど登場しないブランドは自社所有メディアが約30〜40%。高可視性ブランドまわりの第三者言及の内訳はテキストのみ約50〜60%/ハイパーリンク付き約25〜35%/マーケットプレイス・プロフィールへのリンク約5〜10%。言及の位置は本文・表・リスト内が約70〜80%、フッター/サイドバー/ボイラープレートは5%未満。高可視性の言及の約35〜40%がカテゴリ語の5〜10語以内、約20〜25%が比較表現の近く、約10〜15%が説明的文脈を伴わない社名のみの露出。記事内で参照される外部データとして Ahrefs のAI可視性との相関はブランド言及 0.664・被リンク 0.218、AirOps はブランド言及の85%が外部ドメイン由来。限界: 発行元はブランド言及モニタリングツールを販売するベンダーであり本結論に商業的利害を持つ。数値はレンジ表記で有意差検定・信頼区間の提示がなく、相関の観測であって因果の証明ではない)