「今月のリリース、掲載件数は先月と同じくらいでしたね」。四半期の広報レポートを前に、こんな会話をした方も多いんじゃないですかね。
出しても記者からの反応は薄いし、掲載メディアの数もそんなに動かない。
そのうち、出すこと自体が目的みたいな気持ちになってくるわけです(年賀状を書くときの心境に、だんだん近づいてきますね)。
へクス子も、プレスリリースってのは出した先の反応が見えにくい仕事だなぁと思っておりました。
なんですが、その「反応」を返す相手が、いつのまにか記者だけではなくなっていたようでして。
配信されたリリースを追いかけたら、最初にAIが引用するまでの平均が8時間だった、という実測が出てきました。今回はそのへんを掘り下げてみたいと思います。
8,000件超を1週間追ったら、初引用までは平均8時間だった
見ていくのは、プレスリリース配信を手がける Notified が2026年7月9日に公開した実測であります(R)。
Notified ってのは、GlobeNewswire というを運営している会社ですね。
配信網(ワイヤー)ってのは、企業の発表文を報道機関やデータベースへ一斉に配る、有料の流通経路のことです。
対象は、2026年5月のある1週間に GlobeNewswire で配信された8,000件超のリリース。
ローカル・全国・グローバルの各配信サーキットを含み、製品発表も決算も入っています。
引用の計測には、生成AIの分析を手がける Profound が加わっております。
で、結果がどうだったかと言いますと。
- 初めてAIに引用されるまでの平均時間: 8時間
- 引用の大半は、最初の24時間以内に発生
SEO(検索エンジン最適化)の感覚だと、公開したページがじわじわ効いてくるまでには週や月の単位がかかります。
ところがAI側の引用は、出したその日のうちに始まっているわけっすね。
打った手の結果が見えるまでが短い。これは広報にとって、かなり大きな違いになりましょう。
ほぼ全部が引用されるなら、勝負は「どれだけ引かれるか」に移る
同じ調査には、もうひとつ派手な数字が出ています。
分析対象のリリースのうち 99.3% が、ChatGPT か Claude に引用された、というものですね。
ただ、この数字はそのまま持ち帰らないほうがいい、とへクス子は考えております。
理由は3つありまして。
- 発行者の Notified 自身が配信サービスの当事者で、「リリースは引用される」という結論に商業上の利害がある
- 測定対象は自社配信網を通ったものだけで、配信していないコンテンツとの比較対照群が示されていない
- 何を「引用」と数えたのか、判定の手続きが公開されていない
つまり「ワイヤーに流せば99.3%引用される」という因果は、この調査だけでは支持できないんですよ。
なんですが、この数字は別の読み方をすると効いてきます。
仮にほとんどが引用されるのだとすれば、勝負どころは「引用されるかどうか」ではなくなりますね。
どれだけ引かれるか、という量の話に移るわけです。
構造を整えたコンテンツは、平均2.6倍引用されていた
で、その「どれだけ引かれるか」を左右する要因として挙がっているのが、コンテンツの構造であります。
同社の分析では、構造が整ったコンテンツは平均で2.6倍の引用を獲得していました。
ここでいう構造ってのは、要は「事実・固有名・文脈を、AIが素早く取り出せる形になっているか」ということですね。
さらに、プレスリリースに支えられた自社サイトのコンテンツは、最初の30日間で引用される確率が2倍になっていたとのこと。
事例も出ております。
American Battery Technology Company という会社の決算リリースが、30日で1,600件超のAI引用を獲得したそうな。
同業他社や、規模の大きい全国チェーンを上回った件数だったといいます。
会社の大きさではなく、発表文の形のほうで差がついた例と読めるかもしれません。
SOARの4つの信号は、別々の調査とも一致している
Notified は PRWeek との共同レポートで、25万件超のリリースと約2.5億件のAI引用を分析し、SOAR というフレームワークを出しています。
AIが引用先を選ぶときの信号を、4つに整理したものですね。
- S(Structure・構造): 事実や固有名を、AIが素早く特定できる形か
- O(Originality・独自性): 独自データや一次調査、人間の専門性があるか
- A(Authority・権威性): 出典として信頼できる発信元か
- R(Recency・新しさ): 更新や再配信を続けて鮮度を保っているか
発行者の利害を思えば、これ単独では受け取りにくいところです。
ところが面白いことに、4つのうち3つは、まったく別の調査主体のデータとも重なるんですよね。
独自性については、AIに一番引用されるのは独自調査で82%という分析がありました。
構造については、出典と数字を添えると引用が4割変わるという結果ですね。
新しさについては、AIの引用元の65%がこの1年のものだったそうな。
利害の異なる調査が、別々の入り口から同じ方向を指している。ここは補強材料として見てよいところでしょうな。
発表文を「記者に読ませる文」から「AIが事実を取り出せる文」へ
そんなわけで、今回の話を広報・PR目線でまとめてみましょう。
99.3%という数字は、発行者の立場を考えれば上限寄りの値です。そこを主役にする必要はありません。
持ち帰る価値があるのは、8時間という速さと、構造で2.6倍という内部差のほうですね。
前者は、打った手の結果が翌日には見え始めるということ。後者は、同じ発表でも書き方で届き方が変わるということです。
どちらも、広報が自分の手で動かせる範囲の話であります。
では、明日からどうするか。
まず、次のリリースに独自の数字をひとつ以上入れて、事実・固有名・日付を段落の頭のほうへ置くこと。情緒的な言い回しで売る枠を1つ削って、そのぶんを事実に回すイメージですね。
そのうえで、発表から24時間後と30日後に、AIへ実際に聞いてみること。自社の発表内容が拾われているかは、測らないと分かりませんからね。
プレスリリースは、自社が中身を100%コントロールできる数少ない発信面です。すでに毎月出しているものの形を少し変えるだけ、というのが、この打ち手のいいところでございます。
気になった方は、次の発表の1本から試してみてくださいな。
出典
- Notified, “More Than 99% of GlobeNewswire Press Releases Are Cited by ChatGPT or Claude, New Study Finds”, 2026年7月9日, globenewswire.com(2026年5月のある1週間に GlobeNewswire で配信された8,000件超のプレスリリースを対象に、生成AIマーケティング分析事業者 Profound と共同で引用を計測。ローカル/全国/グローバルの各配信サーキットを含み、製品発表・決算・決算以外の発表を対象とする。分析対象の99.3%が ChatGPT または Claude に引用され、初引用までの平均時間は8時間、引用の大半は最初の24時間以内に発生。構造が整ったコンテンツは平均2.6倍の引用を獲得し、プレスリリースに支えられた自社コンテンツは最初の30日間で引用確率が2倍。事例として American Battery Technology Company の決算リリースが30日で1,600件超のAI引用を獲得。限界: 発行者の Notified はプレスリリース配信サービスの提供事業者であり本結論に商業的利害を持つ。測定対象は自社配信網を通った配信物に限られ、配信していないコンテンツとの比較対照群は示されていない。引用の判定手続きも非公開のため、数字は上限寄りの値として扱う必要がある)
- Notified / PRWeek, “AI Is Your Audience: Making Your Content Soar”, 2026年7月22日, globenewswire.com(25万件超のプレスリリースと約2.5億件のAI引用の分析から、AIが引用先を選ぶ信号を Structure(構造)/Originality(独自性)/Authority(権威性)/Recency(新しさ)の4つに整理した SOAR フレームワークを策定)