「サイトはこんなに直したのに、新規が増えない」
商品ページの写真を差し替えて、カゴ落ちのメール導線も直して、読み込み速度まで詰めた。
なのに、新規のお客さんの数だけが、なぜか去年と同じところで止まっている。こういう場面に心当たりのある方も多いんじゃないですかね。
へクス子も、こういうときはまず「サイトの中に、まだ直せる場所があるはずだ」と考える側でした。
なんですが、直す場所を探し続けても数字が動かないとき、原因がサイトの中ではなく、そこへ辿り着く手前にある可能性は残ります。
その手前で何が起きているのかを、消費者に直接聞いた調査が出てきたので、今日はそれを見ていきましょう。
買い物を始める場所として、AIはどれくらい選ばれているのか
米英の成人4,040人に聞いた調査(R)では、買い物の出発点として「AIツール経由」を選んだ人が41.4%、「ブランドの自社サイトへ直接」が38%でした。AI経由が自社サイト直行を上回ったのは、この設問では初めてです。
調査は、コマース向けの基盤を売っている Bloomreach が Propeller Insights に委託したもの。
実施は2026年5月11日から21日で、結果は2026年7月22日に「Is AI Usurping Your Brand?」というレポートとして公開されています。
利用そのものも、もう珍しい行動ではなくなりました。
回答者の75.4%が、買い物や購買判断の助けとしてChatGPTなどのAIツールを使った経験があると答えています。
さらに80.4%が「体験は期待どおり、または期待以上だった」とし、55.6%が今後12か月でもっと使うつもりだと回答しました。
動いたのはAI側ではなく、自社サイト側だった
ここが、この調査でいちばん読み違えやすいところです。
同じ設計の前年調査では、AI経由が41.1%、自社サイト直行が58.9%でした。
つまりAI側は、41.1%から41.4%へ、0.3ポイントしか動いていません。1年ぶんの変化としては、誤差と言われても反論しにくい幅であります。
大きく落ちたのは自社サイト側のほう。58.9%から38%へ、約21ポイントぶん減っています。
なので「AIブームが来て、人がそっちへ流れた」という読み方は、この数字からは出てきません。
正確には、「まずブランドの自社サイトを開く」という習慣のほうが薄れた、ということになりましょう。
順位が入れ替わった理由が、抜いた側の加速ではなく、抜かれた側の減速だったわけですね。マラソンの中継で順位が上がったと思ったら、自分は同じペースで走っていて前の人が失速していただけ、みたいな話です。
この違いは、打ち手を選ぶときに効いてきます。
AI経由の伸びを追いかけるより先に、「自社サイトへ直行してくれていた層が、いまどこで最初の候補を決めているのか」を見に行くほうが筋がいい、ということですから。
AIは買い物のどの場面で使われているのか
使われ方の内訳を見ると、最大の用途は「機能・価格の比較」で48%でした。次いでセールやお得情報の検索が46%、アイデア探しが41%と続きます。
比較が最大用途、というのはブランドにとってかなり具体的な意味を持ちます。
比較ってのは、要は「候補をいくつか並べて、その中から絞り込む」作業のこと。つまりAIは、雑談相手というより、検討フェーズで候補リストそのものを作る側に回っているわけです。
そして候補リストは、載っていないブランドが自力で入り込める場所ではありません。
行動への影響も、前向きな方向で出ました。60.8%が「購買判断への自信が増した」と答え、39.5%が買い物の頻度が増えた、37.5%が支出総額が増えたと回答しています。
期待どおり以上が80.4%、自信が増したが60.8%という並びを見ると、この経路を一過性の物珍しさとして片づけるのは無理がありますね。
この数字を、どこまで信じて動くか
ここは正直に書いておきます。
調査主体の Bloomreach は、コマース向けのパーソナライゼーション基盤とAI検索を売っているベンダーです。「AIコマースが主流になっている」という結論に、商業的な利害を持っています。
加えて、オンラインパネルでの自己申告であり、対象は米英の消費者。日本市場の実測ではありません。
なので、41.4%や75.4%といった水準そのものは、上限寄りに読むのが妥当でしょう。
ただし、同じ設計で2年続けて聞いた調査の「差分」は、水準よりも相対的に信頼できます。バイアスがかかっているとしても、そのバイアスは両年に同じようにかかるからですね。
その差分が示したのが、さきほどの「AI側は横ばい、自社サイト直行が約21ポイント減」でした。ここは、留保を差し引いても残る話だそうな、と流さずに受け止めておきたいところです。
サイトの外側で、自分が候補に残っているかを測る
自社サイトの改善が無駄になったわけではありません。来てくれた人を逃さない仕組みは、これまでどおり効きます。
変わったのは、その手前です。比較の場がAIの回答の中へ移りつつあり、そこで候補から外れていれば、サイトの出来は評価の対象にすらなりません。
そして、この「候補に残れているか」は、自社サイトの解析画面には映らない種類の数字です。
AI経由の影響が指名検索や直接訪問に化けて見えなくなる件は、ChatGPTに名前を出されると2.5倍サイトに来るという調査でも触れました。
そこで、手をつけるならこの2つに絞るのがいいかと思います。
- 自社の商材について、お客さんが実際にAIへ打ちそうな比較質問を10問ほど書き出す
- その質問をAIに投げたとき、自社の名前が何割の回答に出てくるかを、月次で同じ条件で数える
大事なのは、思いついたときに聞いてみることではなく、同じ質問を同じ間隔で測り続けることです。
1回だけ聞いて「出た」「出なかった」と一喜一憂しても、入口の変化は追えません。
なお、AIから来た人をきちんと受け止められているかが気になった方は、AIからの客が一番よく買う時代なのに商品ページの3割はAIから見えていない話のほうが近いテーマになります。
そんなわけで、まずは自社の比較質問を書き出すところから、ぼちぼちやっていきましょう。
出典
- Bloomreach, “From Novelty to Necessity: New Bloomreach Consumer Survey Finds Shoppers Now Prefer AI Tools to Shop”, 2026年7月22日, bloomreach.com(レポート “Is AI Usurping Your Brand?” は bloomreach.com/en/agentic-commerce-report。調査手法: 米国・英国の18歳以上の成人4,040人を対象に、2026年5月11日〜21日、Propeller Insights が Bloomreach の委託で実施したオンラインパネル調査。留保: Bloomreach はコマース向けパーソナライゼーション基盤とAI検索を販売するベンダーであり「AIコマースの主流化」という結論に商業的利害を持つ。回答は自己申告であり、対象は米英の消費者で日本市場の実測ではない)