「AI対策って、結局どんなページを作ればいいんですか」と聞かれる場面が増えてきました。
これ、答えるのが地味に難しいんですよね。
ネットを見れば「リスト記事が強い」「とにかくブログを増やせ」といった話がいくらでも出てきます。
なんですが、その助言が自社にも当てはまるのかは、まったく別の問題でしょう。
へクス子も、業界も商材も違う会社に同じチェックリストを渡すのは、さすがに雑だろうと思っておりました(全員に同じサイズの制服を配る学校か)。
で、この問いに、5つのAIから集めた2万5千件の引用で答えた調査が出てきまして。今回はそのへんを見てみたいと思います。
90日間、AIの回答から引用を抜き出して数えた調査
見ていくのは、AI検索の支援を手がける DeltaV Digital が公開した分析であります(R)。
計測期間は2026年4月14日から7月13日までの90日間。
この間に集めたAIの回答は21,075件で、そこから抜き出した引用が25,337件だそうな。
対象のAIは、ChatGPT、Perplexity、Gemini、Google AI Overviews、Google AI Mode の5つですね。
そして対象の業界は、B2Bのテクノロジーサービス、消費者向け自動車、高等教育、美容医療など8つになります。
指標のほうは、2つ立てられているんですよ。
- : 全引用のうち、その種類のページが何%を占めたか
- : AIがそのページを取ってきた回数あたり、実際に引用した回数
引用率ってのは、要は「読みに来たときに、ちゃんと採用されるか」の打率みたいなものっすね。
なお DeltaV はAI検索対策を売る会社ですし、計測基盤もAI可視性ツールですから、「AI可視性に投資すべき」という結論に寄る立場ではありますね。数字の読み方は、そこを踏まえて進めましょう。
全体の平均を見ると、たしかに「記事とリスト」が上位だった
では、8社ぶんをまとめた全体の数字から見てみましょう。
引用シェアの上位は、こんな並びでした。
- 記事: 23.7%
- リスト記事: 19.6%
- 商品ページ: 16.3%
ここだけ見ると、世間でよく言われる「記事とリストを作れ」という助言は、まあ妥当に見えるわけです。
ところが、打率にあたる引用率で並べ替えると、景色が変わります。
トップに立つのは比較ページで、引用率は1.87。全体の平均をおよそ45%上回る数字ですね。
にもかかわらず、比較ページが全引用に占めるシェアはたったの4.1%でした。
よく採用されるのに、そもそも供給が薄い。棚が空いている状態です。
業界別に開いてみたら、主役がまるごと入れ替わった
で、ここからが本題であります。
同じデータを業界ごとに開くと、引用が集まるページの種類が、業界ごとにきれいに入れ替わっていたんですよ。
- B2Bテクノロジーサービス: リスト記事が61%
- 多店舗展開の美容医療: トップページが55%
- 医療情報を出すNPO: 記事が54%
- 高等教育: 学部・課程のプログラムページが53%
- 消費者向け自動車: 記事とリスト記事で合計64%
調査ではこれを、業界ごとの「引用フィンガープリント」と呼んでいます。
フィンガープリントってのは指紋のことで、業界ごとに違う模様が出る、という意味合いですね。
美容医療でトップページが主役になるのは、なかなか予想しづらいところでしょう。
コンテンツを量産する前に、まず自院のトップページを整えたほうが早い、という話になりますからね。
つまり全体の平均は、どの業界の顔でもなかったわけです。
自社サイトで戦える業界と、外に置いたほうが効く業界がある
もうひとつ、投資先の判断に直結する数字が出ています。
引用のうち「自社ドメインのページ」が占めた割合が、業界でここまで割れているんですよね。
- 高等教育: 74.7%
- 専門食品: 18.9%
- 消費者向け自動車: 7.4%
- B2Bテクノロジーサービス: 0.0%
高等教育はほぼ自社サイトで戦えているのに、B2Bテクノロジーサービスはゼロ。
このB2B領域で最も引用されたドメインは LinkedIn で、736引用だったとのこと。
Reddit にいたっては、8ブランド中7ブランドで上位の引用元に顔を出していました。
自社ブログを積み増すより、第三者の場所に載るほうが効く業界がある、ということですなぁ。
ちなみに「AIに読まれること」と「AIに引用されること」も別物でして。
同じ医療系の質問で、WebMD は頻繁に取得されるのに引用率は0.33。Mayo Clinic は1.79、CDC は1.85でした。
読みには来るけれど、答えには使われない。取得と引用は分けて見る必要がありますね。
8社ぶんの数字を、自社にどう当てはめるか
とはいえ、風呂敷を広げすぎないための留保も置いておきましょう。
この調査の対象ブランドは、全部で8社です。
業界ごとに1社しかないので、「B2Bテクノロジーサービスはリスト記事61%」という数字も、その1社の観測にすぎません。
業界の代表値として扱うには、さすがに心もとない規模でしょう。
それから、前述のとおり発行元はAI検索対策を売る立場にあります。
なので、この記事の結論を「B2Bならリスト記事を作れ」にしてしまうと、それこそ新しい汎用チェックリストを1枚増やすだけになるわけです。
むしろ、この調査が示した価値は別のところにあります。
引用されるページの型は業界で入れ替わる、という事実が実データで確認できたこと。だから、自社の業界で測る意味がある、ということですね。
よそのお手本より、自社の業界の「引用の型」を先に見る
そんなわけで、今回の話をマーケター目線でまとめてみましょう。
AI対策の助言が噛み合わないのは、助言が間違っているからとは限りません。
引用の型が業界ごとに違うのに、平均から作った処方箋を配っているからですね。
高等教育のように自社サイトが7割を占める業界もあれば、B2Bテクノロジーサービスのようにゼロの業界もある。この差を知らずに投資先を決めるのは、なかなか無理があります。
というわけで、押さえどころは2つになりましょう。
ひとつは、自社の業界でAIが今どの種類のページを引用しているかを、定点で測ること。他社の成功例ではなく、自社のカテゴリでの実測を出発点にするわけですね。
もうひとつは、全業界で共通して空いていた比較ページを1本作ること。引用率1.87に対してシェアは4.1%、供給が薄い棚を先に取りにいく手であります。
型が分かれば、作るものは自然と決まります。分からないまま量産するのが、いちばん高くつくところですね。
同じAI相手でも、業界が変われば効く手はここまで変わる。なかなか味わい深いものでございます。
出典
- DeltaV Digital, “AI search citations study: what 25,000+ citations reveal”, 2026, deltavdigital.com(2026年4月14日〜7月13日の90日間、ChatGPT / Perplexity / Gemini / Google AI Overviews / Google AI Mode の5エンジンから取得したAI回答21,075件、抽出引用25,337件を分析。対象は8業界8ブランドで、ブランドごとに最も引用された上位30 URL・上位30ドメイン、計240 URL・240ドメインを分類。ページ種別の引用シェアは記事23.7%・リスト記事19.6%・商品ページ16.3%、引用率は比較ページ1.87がトップで引用シェアは4.1%。業界別ではB2Bテクノロジーサービスでリスト記事61%、美容医療でトップページ55%、医療系NPOで記事54%、高等教育でプログラムページ53%、消費者向け自動車で記事+リスト記事64%。自社ドメインが引用に占める割合は高等教育74.7%からB2Bテクノロジーサービス0.0%まで分散。B2Bテクノロジーサービスの最多引用ドメインは LinkedIn の736引用、Reddit は8ブランド中7ブランドで上位引用元に出現。同一クエリでの引用率は WebMD 0.33、Mayo Clinic 1.79、CDC 1.85。データ取得基盤は Peec AI。限界: 対象ブランドは8社で業界あたり1社であり、業界の代表値ではない。発行元はAI検索・SEO支援を売るエージェンシーである)