「うちのサイト、AI経由のアクセスってほぼゼロなんですよね」。最近、こういう声をよく聞きます。
Google Analytics を開いても、ChatGPTからの流入は全体の1%にも届かない。
なのに、上からは「AI対策をやれ」と言われる。正直、モヤモヤしますよね。
へクス子も、ダッシュボードの数字だけ見て「まだ様子見でいいか」と思っていた側の人間です。
ところが、その1%未満という数字、AIが効いていない証拠ではないかもしれないんですよ。
というのも、AIの影響は流入レポートとは別の場所に化けて出ている、というデータが出てきまして。
今回はそのへんを、第三者のパネル調査から掘ってみます。
AIは「買う前」の段階でいちばん使われている
見ていくのは、Similarweb が米国の消費者パネルで購買行動を調べた2026年6月の調査です(R)。
まず面白いのが、AIツールが使われる「タイミング」なんですね。
買い物の入口、つまり「何を買うか、どんな選択肢があるか」を探す発見の段階では、AIツールが最も役に立つと答えた人が35.0%。検索エンジンは13.6%でした。
続くリサーチの段階でも、AIが32.9%、検索が15%と、AIが倍以上でしょうな。
ところが、価格を比べて「どこで買うか」を決める段階になると、AIは24.3%、検索は22.1%と、ほぼ横並びに戻ります。
要するに、AIは「買う前のフワッとした検討」でこそ使われている、というわけですね。
そしてここで、ブランドの想起集合、つまり「候補として頭に浮かぶ会社のリスト」が作られているわけです。
じゃあ、なぜ流入は1%未満なのか
で、ここで冒頭の疑問に戻ります。そんなに入口で使われているのに、なぜ流入は1%未満なんでしょうね。
答えは単純でして、AIは多くの場合、リンクを踏ませずに会話の中で完結するからです。
実際、AIプラットフォームへの訪問そのものは、2025年から2026年の1年で28.6%も増えているんですよ。
にもかかわらず、そこからサイトへ送られる紹介流入は、横ばいのままでした。
人はAIに教わった名前を、その場のリンクではなく、後から別の経路でたどるんですね。
影響は「指名検索」に化けて出てくる
では、その「後からの経路」はどこに現れるのか。
調査によると、AIで何かを勧められた人のうち、40%はGoogleで追加検索し、28%はブランドのサイトを直接訪ねていました。
ってのは、要は「会社名や商品名そのもので検索すること」ですね。
そして決定的なのが、AIの影響を受けた訪問の55.9%が、この指名検索を経由していた点です。
AIの影響を受けていない訪問だと、指名検索経由は40.4%。差ははっきり出ています。
つまりAIの貢献は、流入レポートの「AI」欄ではなく、「指名検索」や「直接」の欄にこっそり計上されていたわけですね。
ラストクリックだけを見ていると、この化けた分がまるごと視界から消えます。
監視カメラを玄関にだけ向けて、勝手口から入るお客さんを見落としているようなものですよ。
推薦されたブランドは、直リンクなしでも2.5倍来ていた
ここまでは「見えにくい」という話でした。でですね、では実際どれくらい効いているのか。
同じ調査で、いちばん強い数字がこれなんですよ。
ChatGPTにあるブランドを勧められた人は、直リンクも事前のサイト訪問もないのに、その競合よりそのブランドを訪ねる確率が2.5倍でした。
しかも、AIの推薦から来た人は、通常の訪問者に比べて閲覧ページ数が約2倍、滞在時間も約2倍だったそうな。
名前を出されただけで、来訪の量も質も上がっている、ということになりますね。
ただし、ここは冷静に置いておきましょう。
この調査をやった Similarweb は、AI可視性の計測を売っている会社です。数字が自社に有利な方向へ出やすい立場ではあります。
とはいえ、発見段階での使われ方も、指名検索への波及も、方向としては筋が通っているんですよね。
AI流入の「小ささ」で投資判断をしない
そんなわけで、この調査がマーケターに教えてくれることは、意外とシンプルですなぁ。
AI経由の流入が1%未満だとしても、それは「効いていない」とイコールではない、ということですね。
効果は指名検索や直接訪問に化けていて、ラストクリック分析の外側で起きているわけです。
だから、見張る場所のほうを変える必要があります。
打ち手としては、2つに絞れるかと思います。
- AI経由の流入数そのものではなく、指名検索の伸びを成果指標として一緒に追う
- AIが今、自社をどのカテゴリで、どう名前に出しているかを継続して測る
AIに名前を出されることは、リンクを踏ませることより地味に見えます。
でも、その地味な露出が、2.5倍の来訪という形で後から効いてくるわけですね。
見えないから投資しない、ではなく、見えるように測ってから投資を決める。まずは今の語られ方を数えるところから、ぼちぼち始めてみましょうか。
出典
- Similarweb, “How AI Is Changing the Consumer Buying Journey”(2026 AI Brand Visibility Index / AI Consumer Journey), 2026年6月30日, similarweb.com(米国の Market Research Panel、2026年1月データ。購買ジャーニーの段階別に「どのツールが最も有用か」を集計。発見段階でAIツール35.0% vs 検索エンジン13.6%、リサーチ段階32.9% vs 15%、価格・購入段階24.3% vs 22.1%。AIプラットフォーム経由の紹介流入は organic 流入の1%未満で、AIプラットフォームへの訪問は1年で28.6%増でも紹介流入は横ばい。AIの影響を受けた訪問の55.9%が指名検索経由(非影響時は40.4%)。ChatGPTに推薦されたブランドは直リンク・事前訪問なしでも競合より2.5倍訪問され、来訪者は閲覧ページ数・滞在時間ともに約2倍。留保: Similarweb はGEO計測ベンダーでポジショントークの可能性、パネルの正確なサンプルサイズは非公表)