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「在庫わずか!」ってAIにも効くんですか?人間の鉄板が裏目に出る件

POINT この記事のポイント
  • 「在庫わずか」系の煽り、AIだと推薦率が最大2割減
  • 効くのは「煽り」より社会的証明、実利用者の声が最強

「在庫あとわずか!」「今だけ限定」みたいな煽り文句、ネットショップでもチラシでも、もう見ない日はないくらいの定番ですよね。ああいうのを見ると、つい「お、急がなきゃ」とカゴに手が伸びてしまう。へクス子も何度この手に乗せられたか分かりません。

で、最近はその商品説明を、人間だけじゃなくAIも読む時代になってきました。「予算3万円でいいコーヒーメーカー教えて」とでもChatGPTに聞けば、AIが説明文をざっと読んで、おすすめを見繕ってくれるわけです。こういう買い物の仕方、最近めっきり増えました。

となると、気になるのはこういうことじゃないですか。「人間に効いてきた『在庫わずか!』の煽り、AI相手にもそのまま効くんだろうか」と。同じ文章を読ませるんだから効き目も同じ……と思いきや、どうもそう単純な話じゃないらしいんですよ。今回はそのへんを調べた研究を紹介してみたいと思います。

「人間に効くコピー」はAIにも効くのか

この問いを正面から検証したのが、アテネ工科大学などのチームが2025年に公開した研究(R)であります。やったことはいたってシンプルで、商品の説明文に人間向けの「心理テクニック」をこっそり仕込み、AIの推薦がどう変わるかを片っ端から測った、というものですね。

仕込んだ心理テクニックってのは、いわゆる認知バイアス、つまり「人の判断をついゆがめてしまう心のクセ」を突いた表現のことです。社会的証明(みんな使ってます)、希少性(在庫わずか)、権威(専門家も推薦)など、ぜんぶで10種類。これを LLaMA や Mistral、Claude といった複数のAIに読ませて、推薦の頻度と順位がどう動くかを比べたわけですね。

検証の中身を、ざっくり並べるとこんな感じです。

  • 対象AI: LLaMA(最大405B)、Mistral Large、Claude 3.5/3.7 など複数モデル
  • 商品ジャンル: コーヒーメーカー・カメラ・書籍などの統制データに加え、実際のAmazon商品も
  • 測るもの: その商品が推薦される頻度と、おすすめ一覧での順位

効いたのは「煽り」じゃなくて「口コミ」

では、結果を見てみましょう。まずはプラスに働いた、つまりAIに推されやすくなった表現から。

ダントツで効いたのが社会的証明、要は「実際の利用者がこう言ってます」という口コミ系の表現でした。Claude 3.5 では推薦される率がなんと +334% と跳ね上がり、順位も大きく改善したそうな。モデルをならしても平均で +15〜22% ほど露出が増えたわけで、これはかなり強い効果ですね。

もう一つ面白かったのが、値引きの「言い方」であります。実際の値段は1円も変えず、「平均26%オフ」みたいな言葉を添えるだけで推薦率が上がった。Claude 3.7 で +37%、LLaMA でも +23% でした。

本当に半額にするよりも、言葉でお得感を出すほうが効いたというから驚きですね。AIってのは、値札そのものより「セールという雰囲気」に反応するわけです。

「在庫わずか!」は、AI相手だと裏目に出る

ところが、ここからが本題でして。人間向けマーケの鉄板だったはずの「煽り系」が、AI相手だとことごとく逆効果だったんですよ。

なかでもひどかったのが限定性、「選ばれた人だけ」「会員限定」みたいな表現です。これを入れると推薦率は最大で -46%、順位にいたっては -100%超と、書いた瞬間に推薦リストから蹴り落とされる勢いでした。おなじみの希少性、「在庫わずか」「残り3点」系も、推薦率を1〜2割ほど押し下げる結果に。

これ、人間の直感とは完全に逆なんですよね。私たちは「急がないと無くなる」と言われると焦って欲しくなるのに、AIのほうは「なんだか必死だな」とでも感じるのか、むしろ評価を下げてしまう。煽れば煽るほど距離を置かれる、片思いみたいな構図でございます。

「特徴だけ見て」と頼んでも、AIのクセは抜けない

じゃあ「変な煽り文句は無視して、商品の中身だけで判断してね」とAIに頼めば、この偏りは防げるのか。研究チームは、その手も試しています。

結論から言うと、ほとんど防げませんでした。「特徴に集中せよ」と指示しても効果はほぼ変わらず、じっくり考えるはずの推論モデルですら引きずられた。しかもこのクセは、モデルのサイズやメーカーを越えて共通して現れたんですよね。

ということは、この偏りは個々のAIの気まぐれではなく、学習に使った大量のテキストそのものに染み込んでいる、と研究チームは見ています。世の中の文章が「口コミは信頼でき、煽りは胡散臭い」という空気で書かれているから、AIもそれを丸ごと受け継いでいる、というわけですね。なかなか根の深い話であります。

ちなみに、すでに宣伝文句が盛りだくさんの実Amazon商品で試すと、効果は薄まったそうです。みんなが一斉に煽っている場所では、一つの煽りも埋もれてしまう、ということなのかもしれません。

AI時代のコピーは、人間向けの「勝ちパターン」を疑う

そんなわけで、この研究がマーケの実務に何を突きつけるのかをまとめておきます。

一番のポイントは、AI経由の流入が増えていくこれからは、人間向けに磨いてきた勝ちパターンを、いったん疑ってかかる必要があるということでしょう。「在庫わずか」「今だけ」の煽りは、人間には効いてもAIの推薦では足を引っぱりかねない。商品ページがAIに読まれる前提なら、煽り一辺倒のコピーは考えものですね。

代わりにAIが素直に反応したのは、実際の利用者の声や評価といった、裏付けのある情報のほうでした。だとすれば、やるべきことは奇をてらった煽りよりも、本物の口コミやレビューを誠実に積み上げて、それがちゃんと商品説明から見える状態にしておくこと、というあたりに落ち着きます。

最後に一つだけ注意も添えておきます。「言葉だけでお得感を出すと露出が上がる」という結果は、裏を返せば誇大表現の誘惑でもあるんですよね。実態のないセール表現は景品表示法などに触れる恐れもありますから、そこは正直さとのバランスを忘れずに。AIに好かれたいばかりにお客さんを欺いては、本末転倒ですからね。


出典

  • Giorgos Filandrianos, Angeliki Dimitriou, Maria Lymperaiou, Konstantinos Thomas, Giorgos Stamou (2025), “Bias Beware: The Impact of Cognitive Biases on LLM-Driven Product Recommendations”, arXiv:2502.01349, arXiv
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