「もう商品選び、AIに任せちゃえば?」
ネットで何かを買うとき、口コミを読み比べるのが面倒で、つい「ChatGPTにおすすめ聞いちゃおう」となること、増えてきたじゃないですか。へクス子も、こまごました消耗品なんかは、もう自分で吟味する気力がなくて、AIの言うがままにポチっとやることがあるんですよ。
で、最近はその一歩先、「AIが代わりに選んで、買うところまでやる」という仕組みが立ち上がりつつあります。エージェント型コマースってのは、要は「AIにお財布を預けて、最適な買い物を勝手にやってもらう」って感じのものですね。
なんですが、ここでふと気になるのが、そのAIは人間と同じように商品を選んでくれるのか、という点なんですよね。もし選び方にAIならではの偏りがあるなら、売る側にとっても買う側にとっても、けっこう大ごとになりそうです。
この「AIに買い物を任せると、何が起きるのか」を正面から調べた研究がありまして。今回はそのへんを覗いてみたいと思います。
わざとAIに「買い物させて」中身を測る
紹介するのは、コロンビア大学とイェール大学、それに計測ツールを手がける MyCustomAI のチームによる研究です(R)。ACES と名付けた仕組みで、主要なAIを「購買エージェント」として実際に走らせ、その選び方を細かく監査したものであります。
実験はなかなか念入りでしてね。ChatGPT・Claude・Gemini 系の6つのモデルに、フィットネスウォッチから歯磨き粉、洗濯機まで8カテゴリ、それぞれ8商品の中から「どれを買うか」を何百回も選ばせております。人間の買い物とどう違うのか、条件をそろえて比べたわけですね。
「同じ商品ばかり」を選ぶAI
で、まず出てきたのが、AIの選び方は妙に偏っている、という結果でした。
人間なら好みが分かれて、売れ筋もそこそこ散らばりますよね。ところがAIエージェントは、カテゴリの中のごく一部の「定番品」にだけ需要を集中させて、それ以外をほぼ完全に無視する傾向があったんだそうな。棚に8つ商品が並んでいるのに、AIの目には2つか3つしか映っていないかのようでして。
売る側からすると、これはなかなか怖い話であります。その「定番枠」に入れるかどうかで、AI経由の売上が天と地ほど変わってくるわけですからね。
しかも、モデルが変わると順位が激変する
もっと厄介なのが、この「定番枠」が、AIのバージョンが上がるたびに入れ替わるという点でした。
研究では、Fitbit のあるモデルが、Claude のあるバージョンでは45%選ばれていたのに、次のバージョンでは77%まで跳ね上がり、別の最新モデルでは逆に6%まで沈んだ、という例が報告されております。同じ商品なのに、AIが新しくなっただけで、ほぼ独占から消滅寸前まで揺れたわけですね。
これはつまり、自社ではどうにもできない都合で、ある日いきなりAI上の存在感が吹き飛びうるわけです。へクス子などは、これを知ってちょっとゾッとしましたよ。なかなかにスリリングな世界でしょうな。
効くもの、逆効果なもの
では、売る側に打つ手はないのかというと、そうでもないらしいんですよね。研究は、AIの選択を動かす要因もいくつか拾い出しております。
- 並び順の影響が、画面のない場面でも残る。 テキストだけのやり取りでも、提示された順番で選ばれやすさが変わったわけです。「画面の見せ方の問題」では片付けられないということですね
- 「スポンサー」表示は、むしろ嫌われる。 広告だと分かるタグが付いた商品は、選ばれる確率がかえって1〜2割ほど下がったんだそうな
- 運営の「イチ押し」バッジは、強烈に効く。 「Overall Pick」のようなプラットフォーム側のお墨付きが付くと、選ばれやすさが大きく跳ね上がりました
- 商品説明の書き換えで、シェアが動く。 売り手側が説明文を手直しすると、多くのモデルで選ばれる割合がはっきり増えたわけです
整理すると、広告で押し込もうとするのはむしろ逆効果になりがちで(押せば押すほど引かれる営業トークみたいなものですよ)、地道に説明文を整えたり、第三者からまっとうな評価を得たりするほうが効く、ということになりましょう。
結論: AIの「商品棚」は、放っておくと勝手に変わる
ここまでをまとめると、AIエージェントの買い物は、人間のそれとはずいぶん違う理屈で動いている、というのが見えてきます。少数の商品に偏り、モデル更新で激変し、そのくせ広告表示には冷たい。なんとも気難しいお客さんですなぁ。
では、これを商売の側からどう受け止めればいいのか。持ち帰りは2つでしょう。
ひとつめは、AIでの自社の見え方を「一度測って終わり」にしないことですね。今回の研究が示すとおり、選ばれ方はモデルが新しくなるたびに揺れます。だから、AIが自社ブランドや商品をいまどう扱っているかは、定点観測でこまめに追わないと、気づいたときには手遅れ、ということになりかねません。
ふたつめは、力を入れる先を間違えないことです。AI経由の露出を増やしたいからと広告タグに頼ると、むしろ選ばれにくくなる場面がありました。それよりも、商品説明を読み手に分かりやすく整えて、第三者からまっとうな評価を積み上げるほうが、地味でも効いてくるわけですね。
AIが買い物の主役になっていく流れは、もう止まらないでしょう。だとすれば、その気難しい新しいお客さんが自社をどう見ているのかを、早めに知っておく。その一手間こそが、これからのブランドの土台になりますよ。