「AIが出典に挙げてくれた!」で、手放しに喜んでいいのか
最近、自社の名前やプレスリリースが、ChatGPTやGeminiの答えの中に「出典」として登場するようになった、という方が増えてきたじゃないですか。AIに引用されるなんて、ちょっと前までは夢みたいな話でしたけど、いまやそう珍しくもありません。
へクス子の周りのPR担当さんからも、「うちのリリースがAIに引用されてましたよ!」と嬉しそうに報告をもらうことが、ちらほら出てきました。検索で上位を取るのとはまた違う達成感があるみたいで、なんともいい話であります。
ところが、ここでひとつ立ち止まりたいことがありまして。AIが自社を出典に挙げてくれたとして、その引用の「中身」、ちゃんと合ってます? 名前は出してくれたけど、肝心の内容が微妙に違っていたら、それはそれで困った話なんですよね。
この「引用はされた、でも中身は正しいのか」を世界規模でガッツリ検証した調査が出ておりまして、今回はそのへんを掘り下げてみたいと思います。
3,000件を記者が読んで、ほぼ半分に「重大な問題」
調べたのは、EBU(欧州放送連合)とBBCが主導した大規模調査でして、18カ国・14言語にまたがる22の公共放送局が参加しております(R)。ニュースを扱うプロの集団が、本気で腰を据えて検証した格好ですね。
各局のジャーナリストが、ChatGPT・Copilot・Gemini・Perplexityといった主要AIの回答3,000件超を、正確性・出典・事実と意見の区別・文脈という4つの基準で1件ずつ評価したんだそうな。素人の印象ではなく、報道のプロが中身を読んで判定した、というのがミソですよ。
で、結果がどうだったかと言いますと、こうなりました。
- 回答の45%に、少なくとも1つの重大な問題があった
- 31%に、深刻な「出典」の問題(出典の欠落・誤り・誤解を招く帰属)
- 20%に、ハルシネーションや古い情報といった重大な正確性の問題
ここで言う「出典の問題」ってのは、要は「誰が言ったことなのかの扱いが壊れている」状態のことです。実在しない情報源をでっち上げたり、別のメディアの発言をあなたの会社の発言として紹介したり、といった具合ですね。AIに名前を出してもらえても、その3割では帰属そのものが怪しい、というわけであります。
ちなみに「ハルシネーション」ってのは、AIがもっともらしい顔で事実でないことを言ってしまう現象のことでして、これが2割で起きていた、と。読まれてはいるけど、中身の正確さはまた別問題、という構図がくっきり出たわけですね。
AIによって「クセ」がかなり違う
しかも面白いことに、この問題はAIによって出方がずいぶん違っておりました。
調査の中でとりわけ悪かったのが、GoogleのGeminiでして、回答の約72〜76%に重大な出典の問題が見つかったといいます。だいたい4回に3回は出典まわりがおかしい計算ですから、これはなかなかの数字ですなぁ。一方で、ChatGPT・Copilot・Perplexityは、出典の問題が概ね25%未満に収まっていたそうです。
つまり、「AIに引用される」とひとくちに言っても、どのAIに引用されるかで、正しく伝わる確率がぜんぜん違うわけですね。自社の名前が出ているのがGeminiなのかChatGPTなのかで、リスクの大きさが変わってくる、ということになります。
ここ、地味に大事なポイントでして。「AIに載った/載らない」だけを眺めていると、この当たり外れの大きさをまるごと見落としてしまうんですよ。
なぜ「誤った引用」がブランドに効いてくるのか
で、ここからが本題なんですが、間違った引用の何が怖いかというと、その被害が引用された側、つまりあなたのブランドにまで及ぶところなんですよね。
人って、「あの信頼できるメディアが言ってた」「○○社の発表によると」と前置きされると、中身をそこまで疑わずに受け取ってしまうじゃないですか。EBUとBBCが警告しているのもまさにそこでして、AIが信頼されたブランドを出典に挙げると、たとえ内容が間違っていても利用者は信じやすい。結果として、引用された報道機関やブランドの評判のほうが傷つく、というわけです。
へクス子も最初はピンとこなかったんですが、これ、又聞きの噂話に似てるんですよね。「課長が言ってたんだけど」という枕詞がつくだけで、話の中身を確かめもせずに信じて広めちゃう人、職場に一人はいるじゃないですか。聞いた側は内容よりも「誰が言ったか」で信じる。AIの引用も構造はまったく同じで、しかもその「誰が」の部分に、あなたの会社の名前が勝手に使われるかもしれないわけです。
名前を出してもらえるのは、もちろんありがたい。でも、間違った話の保証人にされてしまうと、これはむしろマイナスになりかねませんからね。
しかも、人々はもうAIにニュースを頼り始めている
厄介なのは、この土台がぐらついたまま、AIへの依存だけが先に進んでいることなんですよ。
オックスフォード大学ロイター研究所の年次調査によると、生成AIを使ったことがある人の割合は40%から61%へと急増しております(R)。週に1回以上使う人も、18%から34%へとほぼ倍増しました。情報収集の入り口として、AIの存在感はじわじわ増しているようですね。
ところが同じ調査では、消費者はAIが生成したニュースを「信頼性が低い」と感じている、という結果も出ております。不安を抱えながらも、使う頻度のほうは上がっていく。なんともちぐはぐな話でしょうな。
土台にあたる引用の正確さが3割がた崩れているのに、その上を歩く人はどんどん増えている。この構図を踏まえると、「AIにどう引用されているか」を放置しておくのは、ちょっと心配な話かもしれません。
結論: 「引用された」の次に「正しく引用されたか」を見る
ここまでの話をまとめると、AIに引用されること自体はゴールではない、ということになりますね。名前が出た、で安心するのではなく、その引用の中身が正しいかどうかまでが、これからのブランド管理の守備範囲に入ってくるわけです。
しかも、AIの答えは同じ質問でも揺れますし、モデルごとにクセも違いました。一度確認して「大丈夫だった」で終わらせると、別のタイミングや別のAIでは、違う引用のされ方をしているかもしれません。だからこそ、一回きりの確認ではなく、定点でのチェックが効いてくるわけですね。
まずは、自社の主要なトピックについてChatGPTやGeminiに実際に聞いてみて、自社が出典として出てきたときに、中身が正しいか・正しく帰属されているかを、自分の目で確かめてみるのがおすすめですよ。
そのうえで、AIの答えの中で自社がどう引用されているかを継続的に追う仕組みを持てると、間違った引用がじわじわ評判を削っていくのを、早めに食い止められるはずです。気になった方は、まずそのひと手間から始めてみてくださいませ。
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