「順位は変わってないのに、アクセスだけ落ちてません?」
検索順位は前と変わっていないのに、なぜかサイトへの流入だけがじわじわ減っている。そんな感覚、ありませんか。
へクス子の周りのオウンドメディア担当さんからも、「1位は取れてるのにクリックが伸びないんですよ」という声を、ちらほら聞くようになりました。順位を上げる努力はちゃんと実っているのに、肝心の人がなぜか来てくれないわけですね。なんとも据わりの悪い話であります。
ところが、これは気のせいでも運が悪いわけでもないんですよね。検索結果の一番上に出るようになった「AIによる要約」が、サイトへのクリックを静かに食っている。それを実際のブラウジング履歴で測ったデータがありまして、今日はそのへんを掘り下げてみたいと思います。
AI要約が出ると、クリックはほぼ半分になる
調べたのはPew Research Centerでして、調査に同意した米国成人900人の実際のブラウジング履歴を解析しております(R)。2025年3月のひと月で、なんと68,879件ものGoogle検索が対象になったそうな。アンケートの自己申告ではなく、実際に何をクリックしたかの実データというのがミソですね。
で、結果がどうだったかと言いますと、こうなりました。
- AIによる要約が出たページで、外部サイトのリンクをクリックした人は8%
- 要約が出なかった通常の検索結果では15%
つまり、AI要約が表示されるだけで、外部サイトへのクリック率はほぼ半減していたわけです。「クリック率」ってのは、要は「検索結果を見た人のうち、実際にリンクを押した人の割合」のことですね。さらに念入りなことに、要約の中に並んでいる引用リンク、あれが押された割合は全体のたった1%だったといいます。いやはや、なんとも世知辛い数字ですなぁ。
母数のほうも、米国成人の約58%が月に1回はAI要約付きの検索をしていて、全検索の18%で要約が出ていた、という規模感ですからね。もはや珍しい現象ではない、ということですね。
「答えがその場で出る」と、人は動かない
なぜこんなことが起きるかというと、理屈はわりとシンプルでして、知りたいことがその場で分かってしまえば、人はわざわざ別のサイトまで足を運ばないわけですね。
実際、同じ調査では、AI要約が出たページを見た後にそのままブラウジングを終えてしまう、つまり離脱する割合が26%でして、要約が出なかった場合の16%より高くなっておりました。答えをもらった満足感で、そこで完結してしまうんでしょう。
知りたいことが店先の看板にぜんぶ書いてあったら、わざわざ中まで入って店員さんに聞いたりしませんよね。AIの要約は、その「全部書いてある看板」を検索結果のてっぺんに掲げているようなものであります。
流入減は、ひとつの方向から来ているわけじゃない
しかも厄介なのは、流入が削られる経路がこれひとつだけではない、というところなんですよね。
ロンドン・ビジネス・スクールとUCLAの研究チームは、米国2,014世帯の閲覧データ(約120万URL分)を分析しております(R)。すると、ChatGPTのようなAIを使い始めた人は、20週間以内に従来の検索回数そのものを20%以上減らしていたんだそうな。
特に「○○って何?」といった疑問型の検索や、規模の小さなサイトで、影響が大きかったようですね。クリックされる以前に、そもそも検索すらされなくなってきている、というわけです。
加えてCloudflareが、自社ネットワークのデータで「AIが何ページ読み込んで、その見返りに何人を送り返してくるか」を測っております(R)。2025年7月の時点で、Anthropicは約38,000ページ読んでようやく1人を送客、OpenAIは約1,091ページで1人、という比率でした。
ちなみに従来のGoogle検索は、約5ページで1人。AI、読むだけ読んで帰っちゃうわけっすね。大量に読まれても、それが流入にはほとんど化けない構造になっているわけです。
読まれる、けど来ない。検索される回数も減る。クリックもされない。三方向から同時にじわじわ来ているのが、いまの流入減の正体なんですよね。
結論: 「順位を上げる」から「答えの中に入る」へ
ここまでの話をまとめると、SEOで検索順位を取ること自体の価値が、静かに目減りしているということになります。1位を取っても、その上にAIの要約が乗ればクリックは半分。検索回数そのものも減っている。「検索1位=流入」という長年の前提が、もう素直には成り立たなくなってきたわけですね。
これからマーケターが見るべきなのは、「自社サイトが何位か」よりも、「AIの答えの中に、自社の名前やコンテンツがちゃんと登場しているか」のほうでしょう。ユーザーがAIの要約だけで判断を済ませるなら、その要約に引用される・名前が出ることこそが、新しい意味での「上位表示」になるわけです。
まずは自社の主要なキーワードで、GoogleやChatGPTに実際に聞いてみて、AIの答えの中に自社が出てくるかどうかを、一度自分の目で確かめてみるのがいいかもしれません。順位チェックの数字がいくら良くても、AIの答えに名前がなければ、これからの流入はじわじわ削られていく一方ですからね。気になった方は、まずそこから始めてみてくださいませ。
出典
- Pew Research Center (2025), “Google users are less likely to click on links when an AI summary appears in the results”, リンク
- Lambrecht, A., Padilla, N., Lam, H.T., Hollenbeck, B. (London Business School / UCLA, 2026), “The Impact of LLM Adoption on Online User Behavior”, リンク
- Cloudflare (2025), “The crawl-to-click gap: Cloudflare data on AI bots, training, and referrals”, リンク