「うちの商品でもChatGPT対策って必要?」
最近、マーケティング界隈で「GEO」という言葉を見かけるようになりました。GEOってのは「Generative Engine Optimization」の略で、要はChatGPTやPerplexityといったAIチャットで自社ブランドが推薦されるようにする施策のことですね。従来のSEOのAI版、といったところでしょう。
なんですが、ここでよく出てくるのが「うちの商品カテゴリでも効くの?」という疑問であります。GEO対策にリソースを割くべきか、それとも従来のSEOやペイドソーシャルに集中すべきか。この判断を外すと、けっこう痛い投資ミスになりかねません。
結論から先に言えば、ChatGPT経由の集客効果は「商品の複雑さ」で大きく変わるんですよ。複雑な商品ほど効きやすく、シンプルな商品では効きにくい。今回はこの話を、3つのデータソースで確認します。
973サイトの大規模研究が示した「複雑さの差」
ゲーテ大学のKaiserとマンハイム・ビジネススクールのSchulzeが、なかなか面白い研究を出しておりまして、973のECサイト、合計売上200億ドル(約3兆円)、12ヶ月分のファーストパーティデータを分析したものなんですよ。ChatGPTからのリファラル5万件超と、従来チャネル1.64億件の取引を比較したわけですね。
で、全体の結果としては、ChatGPTリファラルのコンバージョン率はペイドソーシャルを上回るものの、オーガニック検索やメールといった成熟チャネルにはまだ及ばないというものでした。ここまでは「まぁ、そうでしょうね」という話ですよね。
ただし、ここからが重要でして、商品の複雑さが効果を調整することがわかったんですよ。複雑な商品カテゴリほど、ChatGPTリファラルの金銭的成果もトラフィックシェアも高くなる。逆にシンプルな商品では、従来チャネルとの差がほとんど出なかったわけです。
バーティカル別データで見ると、さらにクッキリ
この傾向は、Alhena AIが329ブランド・8つの小売バーティカルを対象に出したレポートでも裏付けられています。CVRってのはコンバージョン率、つまり「サイトに来た人のうち実際に買った人の割合」のことなんですが、このCVRをカテゴリ別に見ると、こうなるんですよね。
- Beauty & Skincare: 5.36%
- Health: 4.68%
- Auto Parts: 3.53%
- Fashion: 2.40%
- Electronics: 2%未満
上位に来ているのは、いずれも「買う前に情報収集が必要な」カテゴリですね。肌質に合うスキンケアを選ぶ、健康上の目的に合ったサプリを比較する、車種に合う部品を特定する。こういった「意思決定に対話が必要な」商品ほど、AIチャット経由のCVRが高いわけです。
さらに、Alhena AIのデータで注目すべきは、LLMトラフィックの全体シェアが約1%にすぎないのに、売上シェアは約10%に達しているという点でしょう。量は少ないが、質が高い。これはLLM経由のユーザーが購買意欲の高い段階でサイトを訪れていることを示しております。
Adobeのデータでも「複雑な買い物」優位が出る
Adobeが数兆件のサイト訪問データと5,000人超の消費者調査から出したレポートも、この構図を補強しています。カテゴリ別のCVRで最も高かったのはエレクトロニクスとジュエリー、最も低かったのはアパレル、家庭用品、食品だったんですよ。
でですね、消費者調査のほうがもっと直接的でして、87%が「大型・複雑な購入でAIを使いやすい」と回答しているんですよね。消費者自身が、AIチャットの使いどころを「複雑な買い物」だと認識しているわけです。
ちなみに、GenAIトラフィックの86%がデスクトップ経由という数字も象徴的ですね。EC全体のデスクトップ比率が34%であることを考えると、AIチャットでの商品検討は「腰を据えて比較する」行動であることがわかります(スマホでポチポチではなく、完全にデスクワークの延長線上ですからね)。
なぜ複雑な商品ほどAI集客が効くのか
ここで「なぜ」を整理しておきましょう。理由はAIチャットの「対話型インターフェース」としての強みにあります。
従来の検索エンジンは「キーワードを入れて、結果一覧から選ぶ」という構造ですね。これはシンプルな商品であれば十分に機能するんですよ。「ティッシュペーパー 安い」で検索すれば、それで事足りるわけです。
ところが、商品が複雑になると話が変わってまいります。「乾燥肌で敏感肌、予算は月5,000円以内で、朝のルーティンに組み込みやすいスキンケアセット」みたいな条件を、従来の検索で絞り込むのは骨が折れるでしょう。
AIチャットなら、こうした多条件の比較検討を対話で進められます。ただしAIの知識には「教え方」「聞き方」で精度が激変する壁があるので、万能ではありません。追加質問もできるし、条件の優先順位を途中で変えることもできます。
つまり、比較検討のプロセスが複雑であるほど、対話型のAIチャットが優位性を発揮するということですね。検索ボックス1つでは収まりきらない購買判断で、LLMは強力なチャネルになりうるわけです。
結論: GEOは「高関与商材」から着手する
LLMリファラルは、全商品に同じ効き方をするわけではありません。比較条件が多く、購入前に調べる時間が長いほど、AIが相談相手として入り込む余地があります。だから、GEOを全商品で一斉に始めるより、効きやすいカテゴリから順番を切るのが現実的です。
まず商品群を高関与商材とコモディティに分け、前者から2〜3カテゴリに絞って検証するのがよさそうです。Alhena AIのバーティカル比較やAdobeのカテゴリ別傾向は、自社カテゴリの優先順位を考えるときの参照材料になります。そこに自社のCVRや問い合わせ内容を重ねると、投資対象をかなり絞りやすくなります。
成長率の時間軸を踏まえて投資配分を決めるなら、ChatGPTリファラルは1年でどこまで伸びたか?が続きになります。
出典
- Kaiser, M. & Schulze, C. (Goethe University Frankfurt / Mannheim Business School), “ChatGPT Referrals to E-Commerce Websites: How Do LLMs Compare Against Traditional Channels?”, SSRN Working Paper, 2025, DOI: 10.2139/ssrn.5585812
- Alhena AI, “329 Brands, 9 Channels: The AI Commerce Report for 2026”, Alhena AI Blog, 2026
- Adobe, “Adobe Analytics: Traffic to U.S. Retail Websites from Generative AI Sources Jumps 1,200 Percent”, Adobe Blog, 2025
関連記事
- ChatGPT流入は買われやすい。でも主力化はまだ早い — 973サイトの実データ
- AIが買い物を代行する時代、ブランドはアルゴリズムを口説く必要がある — AIエージェント購買の未来
- 「ちゃんとデータを渡したのに答えられない」のはなぜか? — AIの知識の壁が商品理解に影響する